〜  Q & A シリーズ 5  〜

       胃がん検診を考える  








 Q. 胃がん検診の現状を教えてください 
 A. 胃がん検診は肺がん検診とならんで、以前より多くの方が受診されています。しかし、最近は受診者の固定化(新しい方があまり検診を受けられていない)や高齢化がすすみ、最も危険な年齢層(60〜75才)の方々の受診が横ばい状態です。受診状況が横ばいであるのは幾つかの要素が考えられます。
毎年、レントゲン検査を受けることが面倒くさい。去年、異常なしだったので今年は受けなくてもいいだろう。費用がかかる。バリウムは苦手だ。などがあります。
事情はわかりますが、胃がんは進行性が早く、1年前には異常なしでも、1年後には手遅れという場合もあります。(一時、話題になったスキルスがんがそうです)
がん検診は繰り返し受診する事で二次予防する事が重要です。
ちなみに全国でおこなわれている胃がん検診を集計した平成15年度日本消化器集団検診学会資料(もちろん、全国すべての受診者が登録されている訳ではないので本当の実数は不明です)では約597万人の方がレントゲン検査を受けられ5970名の胃がんが発見されています。
つまり、1000人に1人の割合で発見されるということです。
この数字をあなたは高いと驚きますか、それともたいした数字ではないと思いますか?

 Q. 胃がん検診にはどんな方法がありますか? 
 A. 従来からおこなわれているのはレントゲン撮影法です。検診バスでおこなう方法と医療機関に出向いておこなう方法があります。前者は間接撮影法といって、安くて短時間に多くの方が受診できますが、精度が落ちる事があります。
後者は直接法といい、価格は高くなり、一度に大勢の方を処理する事は困難ですが、時間をかける分、より精度の高い撮影を行う事が可能です。
会社検診では費用や時間の点で間接法を選択する事が多いようです。市民検診等では地域差はありますが、医療機関で直接法を行う地域が増えてきています。
ちなみに平成15年度のある集計では全国的には間接法80%、直接法20%でした。
その他の方法として、最近はピロリ菌を調べる方法や血液中のペプシノゲンという物質を調べる方法を試みているグループもありますが、いずれも単独では効果は『ない』または『不明』とされています。
 Q. 血液で胃がん検診ができると聞きましたが? 
 A. それはペプシノーゲン法といい、慢性胃炎の程度から間接的に胃がんの存在を予測する方法です。簡単な採血ですみ、価格も安いために企業検診などでは実施されている会社が多くみられます。しかし、陽性率が高く最も危険な年齢層には不向きです。それは、60才代以上では胃がんはないが慢性胃炎である可能性が非常に高いため、陽性となる事が多く、胃がんを疑って精密検査を受けるよう言われる事が多いからです。
また、厚生労働省の『がん検診に関する検討会』では『その有効性が確認されていない』グループに判別されています。
現状では、ペプシノーゲン法のみでおこなう検診は危険と言わざるをえません。
同様にピロリ菌の検査だけで胃がん検診をおこなうことは、『その有効性を判定する根拠が不十分である』グループに判別されています。
いずれも胃レントゲン検査や内視鏡検査(胃カメラ)と併用が必要であり、現状では意味がないと考えた方がよいでしょう。
 Q. 胃内視鏡検診は可能ですか? 
 A. 最近は内視鏡医の技術や機器の進歩で多くの医療機関では内視鏡検査が簡単に苦痛なく受けることが可能になりました。
しかし、個人ドックは別として、企業検診や行政検診で内視鏡検査を検診に取り入れている会社や市町村はごくわずかです。
特に、市民検診ではレントゲンフィルムのように多くの医師が検査後にチェックできるようなシステムが、まだまだ、内視鏡検査では確立されていません。
しかし、ごく近い将来、行政検診もレントゲン検査と内視鏡検査を自由に選択できる時代がくると思われます。
                          2005年10月22日掲載
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