便潜血検査とは何か
便潜血検査とは、便の中に混ざったごく微量の血液を調べる検査です。
胃や大腸に出血を伴う病気がある場合、目で見える出血がなくても、便の中には血液が混ざることが以前から知られていました。
かつては、食事に含まれる動物の血と、人の消化管から出た血を区別できなかったため、検査前に数日間の食事制限が必要でした。しかし約20年前、日本の研究者により、人の血液にのみ反応する検査法が開発されました。
この技術により、食事制限をせずに検査ができるようになり、大腸がんの早期発見を目的とした検診として全国に普及しました。現在、人間ドックや各種検診で行われている便潜血検査は、この改良型です。
便潜血検査で大腸がんがわかる理由
大腸がんや大腸ポリープは、表面がもろく、便が通過する際に出血しやすい特徴があります。
この出血は毎回起こるとは限らず、量もわずかであることが多いため、自覚症状がないまま進行するケースが少なくありません。
便潜血検査は、この目に見えない出血を捉えることで、症状が出る前の段階で異常を見つけるきっかけとなります。
便の採取方法と検査の考え方
便の採取方法には、主に次の二つがあります。
- 便の表面を何回か拭き取る方法
- スティック状の採便棒を便に挿して採取する方法
それぞれに長所と短所があり、どちらが優れているかについては研究者の間でも意見が分かれています。ただし、いずれの方法でも、1日1回を2日間行う二日法が最も検出率が高いと考えられています。
近年では、スティック状の採便棒を用い、結果を数値で示す方法を採用する医療機関が増えています。これは、単なる陽性、陰性だけでは出血量の多さが分からず、危険度の判断が難しいためです。
便潜血検査が陽性だった場合の考え方
便潜血検査で陽性と判定された場合、再度便潜血検査を行って確認することは勧められません。
大腸がんによる出血は毎回一定ではないため、2回目の検査で陰性になることもあります。過去の研究から、便検査を繰り返すことで精密検査の機会を逃す危険性が指摘されています。
陽性と判定された場合は、次のような精密検査を受けることが重要です。
- 大腸内視鏡検査
- 大腸のレントゲン検査
また、近年では、内視鏡やバリウムを使用せず、空気を用いて腹部のCT撮影を行い、三次元画像で大腸を確認する方法も研究されています。この方法は、体の負担が大きい検査が難しい方や、強い不安がある方にとって、将来的に選択肢の一つになる可能性があります。
陽性判定時の病気の見つかる確率
便潜血検査の数値が高いほど、大腸に病気が見つかる可能性が高くなります。
| 検査値の目安 | 見つかる可能性 |
|---|---|
| 1000ng/ml以上 | 大腸がんが見つかる確率が高い |
| 約200ng/ml | 約60パーセントで何らかの病変が見つかる |
1000ng/mlを超える場合、研究によっては3人に1人で大腸がんが発見されたという報告もあります。
また、がん以外にも、大腸ポリープ、憩室、炎症性の病気などが見つかることが多く、何らかの異常が確認される割合は約75パーセントとされています。
便潜血検査で大切なポイント
- 便潜血検査は大腸がんを否定する検査ではない
- 陰性でも病気が隠れていることがある
- 陽性の場合は必ず精密検査が必要
便潜血検査は、あくまで早期発見のための入り口の検査であり、結果の受け止め方が非常に重要です。
須田胃腸科外科医院としてのスタンス
須田胃腸科外科医院では、便潜血検査は「安心のために受ける検査」であると同時に、「次の行動を判断するための検査」だと考えています。陽性という結果に不安を感じる方も多いですが、そこで検査を止めてしまうことが最も大きなリスクになります。
当院では、検査結果の意味を丁寧に説明し、必要な検査や治療を無理なく選択できるよう支援することを大切にしています。気になる結果が出たときこそ、放置せず、早めに専門医へ相談していただきたいと考えています。
熱中症とは、高温多湿の環境下において、体温調節や体内の水分、電解質のバランスがうまく保てなくなった状態を指します。
長時間の炎天下での活動や高温環境への曝露、大量の発汗による水分やナトリウムの喪失、水分のみを摂取することによる低張性脱水などが主な原因とされています。
熱中症の重症度と主な症状
熱中症は症状の重さによって、いくつかの段階に分けられます。呼び方には多少の違いがありますが、一般的には以下のように分類されます。
| 分類 | 主な症状 |
|---|---|
| 日射病 | 頭重感、めまい、一時的な意識障害、顔面蒼白、発汗、皮膚の冷感 |
| 熱けいれん | 吐き気、嘔吐、めまい、口渇、筋肉のけいれんと強い痛み |
| 熱疲労 | 強い疲労感、口渇、脈拍増加、血圧低下、頭痛、発汗、中等度の体温上昇 |
| 熱射病 | 意識障害、全身けいれん、体温41度以上、脱水性ショック、発汗停止、皮膚の乾燥や紅潮 |
特に熱疲労は重症化の前段階であり、見逃すと熱射病へ進行する危険があります。
熱中症の予防について
熱中症は、日頃の心がけで予防できるケースが多くあります。
・十分な睡眠をとり、体調を整える
・暑くなり始めの時期は無理をせず、体を徐々に暑さに慣らす
・作業や運動中は1時間に5から10分程度、日陰などで休憩をとる
・こまめに水分と塩分を補給する
・作業環境では換気や冷房、送風機器の設置を検討する
水分補給の際は水だけでなく、ナトリウムを含む飲料や補助食品を意識することが重要です。スポーツ飲料は便利ですが、ナトリウム量が十分でない場合もあるため注意が必要です。
熱中症が疑われる人が出た場合の対応
周囲で熱中症が疑われる人が出た場合、早期の対応が命を左右します。
軽症の場合
・風通しの良い場所へ移動させる
・衣服をゆるめ、横にして安静にする
・食塩水やスポーツ飲料で水分補給を行う
重症が疑われる場合
・全身を速やかに冷却する
・濡らしたタオルを体表に当て、扇風機や冷房で風を送る
・速やかに救急車を要請する
周囲の人による適切な初期対応が、重篤化を防ぎ、命を救うことにつながります。
須田胃腸科外科医院としてのスタンス
須田胃腸科外科医院では、熱中症は予防と早期対応が何より重要な疾患だと考えています。症状が軽そうに見えても、背景に脱水や全身状態の悪化が隠れていることも少なくありません。当院では、自己判断で様子を見るのではなく、不安や迷いがある段階で医療機関に相談することを勧めています。地域の皆さんが正しい知識を持ち、危険なサインを見逃さず、安全に夏を過ごせるよう支えることが、私たちの役割だと考えています。
ピロリ菌は胃の病気と深く関係する菌として知られていますが、検診や予防、治療との関係については誤解も少なくありません。ここでは、ピロリ菌検査や除菌について、現在わかっている事実をもとに説明します。
ピロリ菌検査は胃がん検診として有効なのか
結論から述べると、ピロリ菌検査を胃がん検診として用いることは無意味と考えられています。平成十六年四月二十七日、厚生労働省老健局老人保健局長名で「がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針」が発令されています。この中で、検診による死亡率減少効果がない検診の一つとして、「ピロリ菌抗体測定による胃がん検診」が明記されています。
現在では、人間ドックや各種検診で、ほかの検査と組み合わせてピロリ菌検査が行われることがあります。しかし、少なくともピロリ菌検査だけで胃がん検診を行うことはできません。ピロリ菌検査単独で胃がんの有無を判断することは、医学的に無理があると言わざるを得ません。
ビールはピロリ菌退治に効くのか
ビールがピロリ菌に効くという話を聞いたことがある方もいるかもしれません。平成十七年三月十七日の新聞報道では、ビールの原料であるホップに含まれるホップポリフェノールという物質が、ピロリ菌が出す毒素を無毒化することを確認したという研究結果が紹介されました。
ただし、この物質はホップの先端部分に含まれており、通常は捨てられてしまう部分です。将来的には、ピロリ菌対策に役立つ可能性があるかもしれませんが、現段階ではビールを飲むことでピロリ菌を退治できるとは言えません。少なくとも、ビールがピロリ菌除去に役立つという科学的根拠はありません。
ピロリ菌除菌で胃がんは予防できるのか
二〇〇二年に世界対がん協会が発表したデータによると、世界全体で約九十万人の胃がん患者が確認されています。そのうち五十六パーセントが東アジアで発生しており、中国が最も多く、日本も十一パーセントと高い割合を示しています。一方、北アメリカ全体では三パーセントにすぎません。
これほど多い胃がんに対して、日本では世界でも例をみないほど高度な診断や治療体制が整っています。一方で、ピロリ菌除菌が胃がん予防に有効かどうかについては、これまで多くの研究や論文が発表されているものの、科学的根拠としてはまだ十分に評価されていません。
専門医が集まる学会でも活発に議論されていますが、明確な結論が出る段階には至っていません。ピロリ菌除菌と胃がん予防の関係がはっきりするまでには、さらに時間と確かな科学的根拠が必要と考えられています。
ピロリ菌除菌ですべての潰瘍は治るのか
ピロリ菌除菌によって胃潰瘍や十二指腸潰瘍を治療する方法は、現在では標準的な治療法として広く行われています。ただし、ピロリ菌を除菌すれば、すべての潰瘍が二度と再発しなくなるわけではありません。潰瘍ができる原因は、ピロリ菌だけではなく、ほかにもさまざまな要因が関係しているためです。
また、四十歳以上の日本人では、約八十パーセントがピロリ菌を保有しているという報告もあります。これは、潰瘍のある人だけでなく、潰瘍のない人も含めて、多くの方がピロリ菌を持っていることを意味します。逆に言えば、胃潰瘍や十二指腸潰瘍のある人すべてが、ピロリ菌を持っているわけではありません。
そのため、潰瘍があり、かつピロリ菌を保有している方にとっては、除菌治療は有効な治療法となります。一方で、潰瘍があってもピロリ菌を持っていない方にとっては、除菌治療は意味を持ちません。
さらに、除菌治療では抗生物質や抗菌薬を通常より多く使用するため、ピロリ菌に耐性ができ、治療効果が得られにくくなってきているという現実もあります。
須田胃腸科外科医院では、検診は病気を見つけるためだけのものではなく、将来の不安を減らし、日常を安心して過ごすための手段だと考えています。年齢や生活習慣、これまでの病歴や現在の症状によって、勧められる検診は一人ひとり異なります。
当院では画一的に検診を勧めるのではなく、必要性と目的を丁寧に説明したうえで、その方にとって本当に意味のある検診を一緒に選ぶ姿勢を大切にしています。検診を受けるかどうか迷っている段階でも構いませんので、まずはご相談ください。
医療が高度化する一方で、治療方法の選択肢は増えています。そのため、患者さん自身が内容を理解し、納得したうえで治療を受けることが、これまで以上に重要になっています。そこで注目されているのが、セカンドオピニオンという考え方です。
セカンドオピニオンとは何か
例えば、胃の不調で医療機関を受診し、検査の結果、胃がんが見つかったとします。担当医から病状の説明を受け、治療方針として手術が必要だと説明され、そのまま治療に進む。これは、これまで多くの医療現場で見られてきた流れです。
しかし、その際に説明内容や治療方針について、どこまで理解し、納得できていたでしょうか。多くの場合、よく分からないまま治療を受けていたという方も少なくありません。
そこで提案されたのが、セカンドオピニオンです。これは、すでに受けた検査結果や主治医の治療方針について、別の医療機関の専門医に客観的な意見を求めることを指します。
がん治療のように治療法が比較的標準化されている病気ばかりではありません。糖尿病、心臓や血管の病気、脳血管疾患、肝臓病などでは、学問的な考え方や治療法が複数存在し、判断が難しいケースも珍しくありません。このようなときに、別の専門医の意見を聞いてみようとすることが、セカンドオピニオンを求めるということです。
どこでセカンドオピニオンを受けられるのか
以前から国立がんセンターでは、これに近い外来が行われてきました。現在では、がんに限らず、さまざまな病気についてセカンドオピニオンを受け付ける医療機関が増えています。
東京近郊では、東京慈恵会医科大学附属病院総合診療部や虎の門病院など、多くの大学病院で各分野の専門医が相談に応じています。対応内容や申し込み方法は医療機関ごとに異なるため、詳しくは各病院のホームページを確認する必要があります。
セカンドオピニオンにかかる費用
費用は医療機関によって異なりますが、おおむね三十分で五千円から一万円程度としている施設が多いようです。健康保険の対象外となる場合が一般的なため、事前に確認しておくことが大切です。
申し込みの際に必要な準備
セカンドオピニオンは診察を受ける場ではなく、意見を聞くための場です。そのため、現在かかっている主治医の紹介状や病状説明書、これまでに受けた各種検査結果を持参する必要があります。
具体的には、血液検査の結果、レントゲン検査、CT検査、MRI検査の画像、顕微鏡検査の資料などが該当します。これらの資料をもとに、主治医から受けた説明や提案された治療法以外に、より適した選択肢があるかどうかを相談します。
セカンドオピニオンを受ける際の注意点
セカンドオピニオンは、求めれば求めるほど良いというものではありません。最も避けたいのは、複数の意見を聞くことでかえって混乱し、次々と医療機関を渡り歩く状態になることです。
まずは、現在の主治医から十分な説明を受け、治療方針を理解することが大切です。そのうえで、自分にとってさらに適した方法がないかを確認する目的で、セカンドオピニオンを活用することが望ましいと考えられます。そのためには、ご自身の病気について、ある程度知ろうとする姿勢も必要です。
主治医に相談すると関係が悪くなるのではないかと不安に感じる方もいますが、そのような心配をするよりも、まずは主治医としっかり話し合うことが重要です。治療を受けるのは医師ではなく、あなた自身です。命はひとつであり、その命について決める権利も、あなた自身にあります。
須田胃腸科外科医院では、患者さんが十分に理解し、納得したうえで治療を選択することを最も大切にしています。現在の治療方針について他の専門医の意見を聞きたいと考えることは、決して特別なことではありません。当院では、セカンドオピニオンを希望される場合にも、その背景や目的を丁寧にお聞きし、必要な情報提供や紹介状の作成など、適切に対応しています。治療は医師が一方的に決めるものではなく、患者さんご自身が選ぶものです。迷いや不安があるときは、一人で抱え込まず、まずはご相談ください。
胃がんは早期発見できれば治癒率の高い病気ですが、進行が早いタイプも存在します。「面倒だから」「去年大丈夫だったから」という油断が最大のリスクです。現在の検診事情と、確実な検査方法の選び方について解説します。
胃がん検診の現状について
胃がん検診は肺がん検診と並んで、以前から多くの方が受診されています。しかし、最近では以下のような課題が見られます。
- 受診者の固定化(新規受診者の減少)
- 受診者の高齢化
- 最も危険な年齢層(60〜75歳)の受診が横ばい
胃がん検診の受診者数は、肺がん検診と同様に以前より増えてはいますが、近年は頭打ちの状態です。 特に、がんのリスクが高まる「60歳から75歳」の年齢層で受診率が伸びていません。これには以下の理由が挙げられます。
-
毎年バリウムを飲むのが苦痛、面倒である
-
費用がかかる
-
「昨年異常がなかったから今年も大丈夫だろう」という自己判断
しかし、胃がんの中には「スキルス胃がん」のように進行が極めて速いタイプがあります。「1年前は異常なしだったが、1年後には手遅れになっていた」というケースも現実に存在します。 がん検診は、繰り返し受診し続けることでしか、その効果(二次予防)を発揮できません。
参考として、全国で行われている胃がん検診を集計した平成十五年度の日本消化器集団検診学会の資料によると、約五百九十七万人がレントゲン検査を受け、そのうち五千九百七十人の胃がんが発見されています。これは、およそ千人に一人の割合で胃がんが見つかっている計算になります。この数字をどう受け止めるかは人それぞれですが、決して無視できる確率ではありません。
胃がん検診の方法
従来から行われている検査方法は、胃のレントゲン検査です。検診バスで行う方法と、医療機関に出向いて行う方法があります。検診バスで行う方法は間接撮影法と呼ばれ、費用が比較的安く、短時間で多くの人が受診できる利点がありますが、その分、精度がやや落ちる場合があります。
一方、医療機関で行う直接撮影法は、費用が高く、一度に多くの人を検査することは難しいものの、時間をかけて撮影できるため、より精度の高い検査が可能です。会社の健康診断では、費用や時間の制約から間接法が選ばれることが多く、市民検診では地域差はあるものの、医療機関で直接法を行う地域が増えてきています。平成十五年度のある集計では、全国的に間接法が約八十パーセント、直接法が約二十パーセントでした。
そのほかの方法として、ピロリ菌検査や血液中のペプシノゲンという物質を調べる方法を取り入れている例もあります。しかし、これらの検査は単独で行った場合、効果がない、もしくは効果が不明とされています。
血液で胃がん検診ができると聞いたことがある方もいるかもしれませんが、これはペプシノゲン法と呼ばれる方法です。慢性胃炎の程度から間接的に胃がんの存在を予測する検査で、簡単な採血で済み、費用も比較的安いため、企業検診などで導入されている例があります。
しかし、この検査は陽性率が高く、特に六十歳以上の最も胃がんの危険性が高い年齢層には向いていません。高齢になると、胃がんがなくても慢性胃炎を持っている人が非常に多く、その結果、陽性と判定され、精密検査を勧められるケースが増えるからです。また、厚生労働省のがん検診に関する検討会では、その有効性が確認されていない検査として分類されています。このため、ペプシノゲン法のみで行う胃がん検診は危険と言わざるを得ません。
同様に、ピロリ菌検査だけで胃がん検診を行うことについても、その有効性を判断する根拠が不十分とされています。いずれの方法も、胃レントゲン検査や内視鏡検査と併用して初めて意味を持つものであり、単独での検診は現状では勧められません。
最後に、胃内視鏡検診についてです。近年は内視鏡医の技術や機器の進歩により、多くの医療機関で比較的苦痛の少ない内視鏡検査が可能になっています。しかし、個人の人間ドックを除くと、企業検診や行政検診で内視鏡検査を取り入れているところはごくわずかです。
市民検診では、レントゲン検査のように、複数の医師が検査後に画像を確認できる体制が、内視鏡検査ではまだ十分に整っていないという課題があります。ただし、近い将来には、行政検診においてもレントゲン検査と内視鏡検査を自由に選択できる時代が来ると考えられています。
須田胃腸科外科医院からの検診の考え方
胃がん検診にはいくつかの方法がありますが、重要なのは「どの検査が最新か」ではなく、「その方にとって、今、意味のある検査を継続して受けること」です。胃がんは自覚症状が出にくく、症状が出たときには進行していることも少なくありません。そのため、症状の有無に関わらず、定期的な検診が大切になります。
これまで一度も胃がん検診を受けたことがない方や、数年に一度しか受けていない方には、まず胃のレントゲン検査を勧めます。特に六十歳以上の方では、前年に異常がなかった場合でも、毎年の受診が重要です。一年で状況が大きく変わる胃がんも存在するためです。
バリウム検査がどうしても苦手な方や、過去に胃の病気を指摘されたことがある方、より詳しい検査を希望される方には、胃内視鏡検査という選択肢もあります。近年は検査機器や技術が進歩し、以前に比べて負担は軽くなっています。医師と相談のうえ、ご自身に合った方法を選ぶことが大切です。
血液検査やピロリ菌検査については、あくまで補助的な位置づけと考えています。これらの検査だけで胃がんの有無を判断することはできず、安心材料にはなりません。結果に一喜一憂するのではなく、必要に応じて画像検査や内視鏡検査につなげることが重要です。
須田胃腸科外科医院では、年齢、これまでの検診歴、生活習慣、体調などを踏まえ、その方にとって無理のない、現実的な検診の受け方を一緒に考えることを大切にしています。胃がん検診は一度受けて終わりではなく、続けることで意味を持つ予防医療です。迷われたときは、ぜひ一度ご相談ください。
生活習慣病として知られる糖尿病、高血圧、肥満、高脂血症。実は「がん」もこれらに続く「第5の生活習慣病」と言われています。日々の食習慣や生活スタイルが、がんのリスクに深く関わっているのです。
このページでは、5つの主要ながんと食習慣の関係、そして今日からできる予防のポイントをわかりやすくご紹介します。
がんと食習慣の関係性
【食道がん】アルコールと熱い飲み物に注意
地域傾向
多発国:中国、フランス
国内:秋田、沖縄、鹿児島
リスクが高まる習慣
-
アルコールの多飲
-
熱い温度での飲食(茶粥やマテ茶などを常習的に摂取する習慣)
男性に多い傾向がありますが、飲酒習慣や熱いものを好む食習慣のある方は注意が必要です。
【胃がん】塩分の過剰摂取が最大のリスク
地域傾向
多発国:中国、日本(特に東アジア地区)
国内:秋田、山形、新潟(沖縄、南九州は比較的少ない)
リスクが高まる習慣
-
塩蔵魚や漬け物など、高塩分食品の多量摂取
かつて日本人に最も多かったがんですが、冷蔵庫の普及により保存食(塩蔵食品)への依存が減ったことで、発生も抑制傾向にあります。
【肝臓がん】ウイルス要因に加え、アルコールとカビ毒も関与
地域傾向
多発国:中国
国内:大阪、福岡(西日本)
確実な危険因子
-
肝炎ウイルス(B型肝炎、C型肝炎)
リスクが高まる習慣
-
アルコールの多飲
アルコール性肝炎から肝硬変、そして肝臓がんへと進行するケースがあります。
-
カビ毒(アフラトキシン)
保存状態の悪いナッツや穀類に発生するカビが毒素を出し、リスクとなります。
【大腸がん】食の欧米化が影響する「生活習慣病」的がん
地域傾向
多発国:オーストラリア、ニュージーランド、アイルランド、イギリス、アメリカ
少ない国:南および東南アジア、アフリカ
リスクが高まる習慣
-
赤肉(豚肉・牛肉)や加工肉の過剰摂取
-
高脂肪食
-
アルコールの多飲
-
野菜の摂取不足
-
運動不足
-
肥満、喫煙
具体的な予防の目安
大腸がんは食生活の改善でリスクを下げることが可能です。
-
豚肉・牛肉の摂取は1日80g程度に抑える
-
野菜を1日350g程度摂取する
-
アルコールは1日2合まで
-
脂肪分を総カロリーの20%程度に抑える
-
BMI(肥満度)を25以下に維持する
第5の生活習慣病としての「がん」
生活習慣病といえば、糖尿病、高血圧、肥満、高脂血症の4つが代表的ですが、これらに続く第5の生活習慣病として「がん」が挙げられます。
特に以下の4大要素は、がんを助長する重大な危険因子です。
-
喫煙
-
肥満・やせ
-
糖尿病
-
食習慣の偏り
それぞれの要因について詳しく解説します。
【喫煙】最大の発がん因子
喫煙は肺がんのリスクと思われがちですが、実際には「のど」や「口」など、タバコの煙が直接触れる場所で極めて高いリスクとなります。
-
喉頭がん:32.5倍(非喫煙者比)
-
肺がん:4.5倍
-
口腔がん:2.9倍
-
食道がん:2.2倍
-
胃がん:1.5倍
全体として、喫煙者は非喫煙者に比べてがんの危険度が1.65倍になります。
【肥満・やせ】適正体重の維持が重要
国立がんセンターの報告によると、男性において「肥満」も「やせすぎ」もリスクとなることが分かっています。
-
肥満(BMI30以上):危険度22%増
-
やせ(BMI19以下):危険度29%増
極端な体重の増減を避け、標準的な体重を維持することが重要です。なお、女性では体型による有意な差は見られませんでした。
【糖尿病】インスリンの影響と合併リスク
日本人の糖尿病の9割を占める「2型糖尿病」は、過食や運動不足などの生活習慣に起因します。
愛知がんセンターの調査(2004年)では、糖尿病歴のある人は、そうでない人に比べてがんのリスクが高いことが示されています。
-
肝臓がん:2.2倍(男女)
-
咽頭がん・膵臓がん:2倍(男性)
-
肺がん:1.5倍(男女)
-
大腸がん:1.3倍(男性)
【食習慣の偏り】穀類減少と脂肪過多
過去40年間の日本人の食事内容を分析すると、総摂取カロリー(約2000kcal)は変わっていないにもかかわらず、その中身が劇的に変化しています。
-
穀類(炭水化物):約45%減少
-
脂肪分:約250%増加(2.5倍)
同期間のアメリカ人の脂肪摂取量には大きな変化がないことと比較しても、日本人の食生活がいかに急激に「高脂肪化」したかが分かります。
この食習慣の変化が、肥満、高血圧、糖尿病、高脂血症を招き、内臓脂肪を蓄積させることで、がんのリスクを高める悪循環を作っています。
まとめ
がんは「第5の生活習慣病」です。日々の食習慣を見直すことで、リスクを減らすことができます。
今日からできること
- 適正体重(BMI 25以下)を維持する
- 野菜を1日350g摂取する
- 塩分を控えめに
- 赤身肉は1日80g程度に
- アルコールは適量(2合まで)に
- 禁煙する
- 適度な運動を習慣にする
小さな変化の積み重ねが、将来の健康を守ります。
国はがん対策として検診受診率の向上を掲げていますが、それ以上に重要なのが、検診で異常を指摘された後の「精密検査」です。
「忙しいから」「症状がないから」と放置してしまうことが、いかにリスクの高いことか。当院のデータや経験をもとに、検診の現状と「命を守るための行動」について解説します。
1. 胃がん検診のなぜ「職域検診」の受診者は精密検査を受けないのか?
胃がん検診における「精密検査受診率(異常ありと言われた人が、実際に精密検査を受けた割合)」を見ると、自治体が行う市民検診に比べ、企業などで行う「職域検診」の方が受診率が低い傾向にあります。
この差が生まれる原因として、検診結果の伝え方の違いが挙げられます。
個別検診(市民検診)のメリット
さいたま市の個別検診などの場合、受診した医療機関で結果を聞くことができます。担当医が直接、目の前にある胃のレントゲン写真を見せながら「ここがおかしいですよ」と説明するため、患者様も危機感を持ちやすく、スムーズに精密検査へ移行できます。
職域検診の課題
一方、職域検診では、結果が書類だけで通知されることが多く、産業医から直接レントゲン写真を見せられて説明を受ける機会は稀です。そのため、「要精密検査」という文字を見ても実感が湧きにくく、説得力に欠ける側面があります。
また、現役世代は仕事が忙しく、「自分は健康だ」「言われたから仕方なく受けただけ」という意識が強いため、結果を放置してしまうケースが見受けられます。
しかし、胃がんは年齢に関係なく日本人に多いがんの一つです。検診の形式に関わらず、異常を指摘された場合は必ず精密検査を受けてください。
大腸がん検診「痔だろう」という思い込みが発見を遅らせる
大腸がん検診(便潜血検査)で異常を指摘された場合の精密検査受診率は、胃がん検診に比べてさらに低い傾向にあります。
受診率が低い理由として、「大腸の検査は痛そう・恥ずかしい」といったイメージが先行していることもありますが、現場で患者様と接していて最も多く感じるのは、以下のような「思い込み」です。
- 何の症状もないし、自分ががんであるはずがない
- 便の検査くらいでがんが分かるはずがない
- 痔があるから、血が混じっただけだろう
当院のデータが示す真実
しかし、当院の実績データを見ると、胃がんの発見率に比べ、大腸がんの発見率は非常に高い数値を示しています。
そして重要なのは、大腸がんが見つかった方のほとんどが「自分は健康だ」と思っていたという事実です。
進行しても自覚症状が少ないのが、胃がんとの大きな違いであり、大腸がんの怖いところです。「痔だろう」という自己判断は禁物です。便潜血検査で陽性が出た場合は、必ず専門医に相談してください。
大腸がんは早期発見で「治るがん」へ
日本の死亡原因において、がんは依然として大きな割合を占めていますが、その中で大腸がんは「検診の恩恵を最も受けやすいがん」の一つと言えます。
大腸がんは、他臓器への転移が少なく、たとえ進行がんであっても適切な切除が行われれば、5年生存率は良好です。
過去に大宮医師会管内で実施されたデータを見ても、過去14年間で延べ28万人検診で発見され適切な治療を受けた方の死亡率は低く抑えられています。
検診の目的は、症状のない段階でがんを見つけることです。
「精密検査が必要です」という通知は、あなたの命と、ご家族の幸せを守るための重要なサインです。
そのサインを見逃さず、必ず精密検査を受けてください。












