〜  Q & A シリーズ 3  〜

  『ピロリ菌:最近の話題あれこれ(1)』  







 Q. 胃がん検診でピロリ菌検査は有効ですか? 
 A. 結論を先に述べれば無意味です。
厚生労働省老健局老人保健局長名で平成16年4月27日に『がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針』が発令されています。これによると検診による死亡率減少効果がない検診として『ピロリ菌抗体測定による胃がん検診』があげられています。他のいろいろな検査とピロリ菌検査をあわせて行うドックや検診がおこなわれていますが、少なくとも『ピロリ菌検査』単独で胃がん検診をかたるには無理があります。

 Q. ビールはピロリ菌退治に効くのですか? 
 A. 平成17年3月17日の新聞報道によるとある研究者がビールの原料であるホップに含まれる『ホップポリフェノール』という物質がピロリ菌が発する毒素を無毒化することを確認したとのことです。
この物質はホップの先端にあり、普通は捨ててしまう部分だそうです。いずれはピロリ菌の退治に役立つかも知れませんが、現段階では『ビールはピロリ菌退治に役立つことはない』と言えます。
 Q. 日本人に多い胃がんはピロリ菌除菌で予防できるのですか? 
 A. 2002年世界対がん協会の発表では、全世界で約90万人の胃がん患者さんが発見されています。そのうち、56%は東アジアの方で最も多いのは中国、日本は11%と高い値を示しています。ちなみに北アメリカ(北米大陸全体)は3%にすぎません。
これだけ多い胃がんに対して、日本の胃がん治療方針は世界に例をみない程に優れた体制が整っています。
一方、ピロリ菌除菌が胃がん予防に有効であるか否かは多くの論文が発表されていますが、まだまだ科学的根拠は評価されていません。そのために多くの専門医を集めた学会でも議論されていますが、結論がでるところまではいっていません。
ピロリ菌除菌と胃がん予防の関係が明白になるまでには、まだ多くの時間と科学的根拠が必要でしょう。
 Q. ピロリ菌除菌ですべての胃潰瘍や十二指腸潰瘍は治るのですか? 
 A. ピロリ菌の除菌で胃潰瘍や十二指腸潰瘍を治そうとする治療法はいまや標準的治療法になっています。しかし、ピロリ菌をやっつける治療法で、すべての潰瘍が二度と再発しなくなるわけはないという事実もあります。これは潰瘍のできる原因がピロリ菌だけでなく、他のいろいろな要素が原因になりうる事を示しています。
ところで、40才以上の日本人はピロリ菌の保有率が80%程度であるとの報告もあります。これは40才以上の日本人のうち、80%は潰瘍のある人もない人もピロリ菌は持っていることを意味します。
逆に言えば、胃潰瘍や十二指腸潰瘍の方すべてがピロリ菌を持っているとういことではないというわけです。つまり、胃潰瘍や十二指腸潰瘍があり、ピロリ菌をもっている方には除菌法は有効な治療法ですが、潰瘍があってもピロリ菌をもっていない方には除菌法は無意味です。
さらに、除菌治療では、抗生物質や抗菌剤を通常使用量より多く使うことにより、ピロリ菌に耐性ができ、効果がでにくくなってきている事も事実です。
                           2005年3月21日掲載
Q & A履歴に戻る