胃がん検診を正しく理解する。検査方法と受診のポイント
胃がんは早期発見できれば治癒率の高い病気ですが、進行が早いタイプも存在します。「面倒だから」「去年大丈夫だったから」という油断が最大のリスクです。現在の検診事情と、確実な検査方法の選び方について解説します。
胃がん検診の現状について
胃がん検診は肺がん検診と並んで、以前から多くの方が受診されています。しかし、最近では以下のような課題が見られます。
- 受診者の固定化(新規受診者の減少)
- 受診者の高齢化
- 最も危険な年齢層(60〜75歳)の受診が横ばい
胃がん検診の受診者数は、肺がん検診と同様に以前より増えてはいますが、近年は頭打ちの状態です。 特に、がんのリスクが高まる「60歳から75歳」の年齢層で受診率が伸びていません。これには以下の理由が挙げられます。
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毎年バリウムを飲むのが苦痛、面倒である
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費用がかかる
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「昨年異常がなかったから今年も大丈夫だろう」という自己判断
しかし、胃がんの中には「スキルス胃がん」のように進行が極めて速いタイプがあります。「1年前は異常なしだったが、1年後には手遅れになっていた」というケースも現実に存在します。 がん検診は、繰り返し受診し続けることでしか、その効果(二次予防)を発揮できません。
参考として、全国で行われている胃がん検診を集計した平成十五年度の日本消化器集団検診学会の資料によると、約五百九十七万人がレントゲン検査を受け、そのうち五千九百七十人の胃がんが発見されています。これは、およそ千人に一人の割合で胃がんが見つかっている計算になります。この数字をどう受け止めるかは人それぞれですが、決して無視できる確率ではありません。
胃がん検診の方法
従来から行われている検査方法は、胃のレントゲン検査です。検診バスで行う方法と、医療機関に出向いて行う方法があります。検診バスで行う方法は間接撮影法と呼ばれ、費用が比較的安く、短時間で多くの人が受診できる利点がありますが、その分、精度がやや落ちる場合があります。
一方、医療機関で行う直接撮影法は、費用が高く、一度に多くの人を検査することは難しいものの、時間をかけて撮影できるため、より精度の高い検査が可能です。会社の健康診断では、費用や時間の制約から間接法が選ばれることが多く、市民検診では地域差はあるものの、医療機関で直接法を行う地域が増えてきています。平成十五年度のある集計では、全国的に間接法が約八十パーセント、直接法が約二十パーセントでした。
そのほかの方法として、ピロリ菌検査や血液中のペプシノゲンという物質を調べる方法を取り入れている例もあります。しかし、これらの検査は単独で行った場合、効果がない、もしくは効果が不明とされています。
血液で胃がん検診ができると聞いたことがある方もいるかもしれませんが、これはペプシノゲン法と呼ばれる方法です。慢性胃炎の程度から間接的に胃がんの存在を予測する検査で、簡単な採血で済み、費用も比較的安いため、企業検診などで導入されている例があります。
しかし、この検査は陽性率が高く、特に六十歳以上の最も胃がんの危険性が高い年齢層には向いていません。高齢になると、胃がんがなくても慢性胃炎を持っている人が非常に多く、その結果、陽性と判定され、精密検査を勧められるケースが増えるからです。また、厚生労働省のがん検診に関する検討会では、その有効性が確認されていない検査として分類されています。このため、ペプシノゲン法のみで行う胃がん検診は危険と言わざるを得ません。
同様に、ピロリ菌検査だけで胃がん検診を行うことについても、その有効性を判断する根拠が不十分とされています。いずれの方法も、胃レントゲン検査や内視鏡検査と併用して初めて意味を持つものであり、単独での検診は現状では勧められません。
最後に、胃内視鏡検診についてです。近年は内視鏡医の技術や機器の進歩により、多くの医療機関で比較的苦痛の少ない内視鏡検査が可能になっています。しかし、個人の人間ドックを除くと、企業検診や行政検診で内視鏡検査を取り入れているところはごくわずかです。
市民検診では、レントゲン検査のように、複数の医師が検査後に画像を確認できる体制が、内視鏡検査ではまだ十分に整っていないという課題があります。ただし、近い将来には、行政検診においてもレントゲン検査と内視鏡検査を自由に選択できる時代が来ると考えられています。
須田胃腸科外科医院からの検診の考え方
胃がん検診にはいくつかの方法がありますが、重要なのは「どの検査が最新か」ではなく、「その方にとって、今、意味のある検査を継続して受けること」です。胃がんは自覚症状が出にくく、症状が出たときには進行していることも少なくありません。そのため、症状の有無に関わらず、定期的な検診が大切になります。
これまで一度も胃がん検診を受けたことがない方や、数年に一度しか受けていない方には、まず胃のレントゲン検査を勧めます。特に六十歳以上の方では、前年に異常がなかった場合でも、毎年の受診が重要です。一年で状況が大きく変わる胃がんも存在するためです。
バリウム検査がどうしても苦手な方や、過去に胃の病気を指摘されたことがある方、より詳しい検査を希望される方には、胃内視鏡検査という選択肢もあります。近年は検査機器や技術が進歩し、以前に比べて負担は軽くなっています。医師と相談のうえ、ご自身に合った方法を選ぶことが大切です。
血液検査やピロリ菌検査については、あくまで補助的な位置づけと考えています。これらの検査だけで胃がんの有無を判断することはできず、安心材料にはなりません。結果に一喜一憂するのではなく、必要に応じて画像検査や内視鏡検査につなげることが重要です。
須田胃腸科外科医院では、年齢、これまでの検診歴、生活習慣、体調などを踏まえ、その方にとって無理のない、現実的な検診の受け方を一緒に考えることを大切にしています。胃がん検診は一度受けて終わりではなく、続けることで意味を持つ予防医療です。迷われたときは、ぜひ一度ご相談ください。














