がん検診とがん死亡率の減少効果について
国はがん対策として検診受診率の向上を掲げていますが、それ以上に重要なのが、検診で異常を指摘された後の「精密検査」です。
「忙しいから」「症状がないから」と放置してしまうことが、いかにリスクの高いことか。当院のデータや経験をもとに、検診の現状と「命を守るための行動」について解説します。
1. 胃がん検診のなぜ「職域検診」の受診者は精密検査を受けないのか?
胃がん検診における「精密検査受診率(異常ありと言われた人が、実際に精密検査を受けた割合)」を見ると、自治体が行う市民検診に比べ、企業などで行う「職域検診」の方が受診率が低い傾向にあります。
この差が生まれる原因として、検診結果の伝え方の違いが挙げられます。
個別検診(市民検診)のメリット
さいたま市の個別検診などの場合、受診した医療機関で結果を聞くことができます。担当医が直接、目の前にある胃のレントゲン写真を見せながら「ここがおかしいですよ」と説明するため、患者様も危機感を持ちやすく、スムーズに精密検査へ移行できます。
職域検診の課題
一方、職域検診では、結果が書類だけで通知されることが多く、産業医から直接レントゲン写真を見せられて説明を受ける機会は稀です。そのため、「要精密検査」という文字を見ても実感が湧きにくく、説得力に欠ける側面があります。
また、現役世代は仕事が忙しく、「自分は健康だ」「言われたから仕方なく受けただけ」という意識が強いため、結果を放置してしまうケースが見受けられます。
しかし、胃がんは年齢に関係なく日本人に多いがんの一つです。検診の形式に関わらず、異常を指摘された場合は必ず精密検査を受けてください。
大腸がん検診「痔だろう」という思い込みが発見を遅らせる
大腸がん検診(便潜血検査)で異常を指摘された場合の精密検査受診率は、胃がん検診に比べてさらに低い傾向にあります。
受診率が低い理由として、「大腸の検査は痛そう・恥ずかしい」といったイメージが先行していることもありますが、現場で患者様と接していて最も多く感じるのは、以下のような「思い込み」です。
- 何の症状もないし、自分ががんであるはずがない
- 便の検査くらいでがんが分かるはずがない
- 痔があるから、血が混じっただけだろう
当院のデータが示す真実
しかし、当院の実績データを見ると、胃がんの発見率に比べ、大腸がんの発見率は非常に高い数値を示しています。
そして重要なのは、大腸がんが見つかった方のほとんどが「自分は健康だ」と思っていたという事実です。
進行しても自覚症状が少ないのが、胃がんとの大きな違いであり、大腸がんの怖いところです。「痔だろう」という自己判断は禁物です。便潜血検査で陽性が出た場合は、必ず専門医に相談してください。
大腸がんは早期発見で「治るがん」へ
日本の死亡原因において、がんは依然として大きな割合を占めていますが、その中で大腸がんは「検診の恩恵を最も受けやすいがん」の一つと言えます。
大腸がんは、他臓器への転移が少なく、たとえ進行がんであっても適切な切除が行われれば、5年生存率は良好です。
過去に大宮医師会管内で実施されたデータを見ても、過去14年間で延べ28万人検診で発見され適切な治療を受けた方の死亡率は低く抑えられています。
検診の目的は、症状のない段階でがんを見つけることです。
「精密検査が必要です」という通知は、あなたの命と、ご家族の幸せを守るための重要なサインです。
そのサインを見逃さず、必ず精密検査を受けてください。














