人は石垣  人は城 





本ホームページも開設以来、5年目を迎えることとなりました。この間に、少しでも皆様のお役に立てる情報をお送りできたのではないかと自負しております。

さて、今回は多少、違った角度からのお話をいたします。

NHK大河ドラマ「風林火山」も昨年末で終了しました。

   疾(はや)きこと風の如く
   徐(しず)かなること林の如く
   侵掠(しんりゃく)すること火の如く
   動(うご)かざること山の如し

古代中国の孫子に影響を受けた「風林火山」を旗印に戦国の世を駆け抜けた武将・武田信玄の物語でした。
ドラマの終回近くは壮絶な上杉景虎(謙信)との「川中島の戦い」がクライマックスでした。史実からは前後5回にわたる合戦があったそうですが、実際には2回であったという学者もいるそうです。しかし、いずれにしてもどちらが勝者か見解が分かれる程の実力が伯仲した2大武将の争いであったことは間違いありません。
特に第4回の「八幡原の戦い」は両雄が直接、一騎打ちになった戦いでありながら具体的な史料は存在しないといわれ、より空想をかき立てるところです。
ここに「武田節」という歌があります(作詞;米山愛紫、作曲;明本京静、昭和36年)。その一節に「人は石垣 人は城 情けは味方 仇は敵」とあります。
現代からみた武田武士の心意気をうまく表現しています。

さて、話を現代に戻してみると果たして「人は石垣 人は城」でしょうか。
一人一人は小さな人間であってもそれがうまくかみ合い、支え合って石垣と成り、頑強な城(国家・地域・組織)となっているでしょうか。
厚労省の不誠実な年金問題、防衛省のおねだり夫婦、天下りの横行、ゆとり教育の弊害等々と枚挙にいとまがない程、今の日本は乱れています。
我々、医療の世界に置き換えてみても同様です。
個人や小規模な医療機関は「石垣」です。それをうまく組み合わせて機能させるのが、地域連携であり、病診連携(病院と診療所が機能分担すること)です。
さらにその上に第3次医療機関である地域基幹病院やがん拠点病院があり、なんとか「城」を形成しています。
ところが、今、「城」や「石垣」が崩壊しつつあります。
すでに「10年後には外科希望者は0人になる」との報告が医療専門家の調査でも言われています。
医療は受ける側、提供する側があって成立する契約です。どちらが強すぎても成り立ちません。
その場しのぎのご都合主義、揚げ足取り主義は止めて、ともによい医療を目指していかなければなりません。

報道機関を「仇」にする気持ちはありませんが、最近の某新聞社主筆の理論、行動は自分の考えで国を動かそう、国民を煽動しようとする暴挙としか思えません。
同様に医療報道においてもネガティブな部分のみを大きく報道し、後日談(実は後日談の方がまったく逆の話であった)や訂正記事は皆無といっていいほどです。
現状は勤務医だけが疲弊しているのではなく、医療人・医療界全体が疲弊し、崩れかかっています。
事実を事実として、問題点を問題点として正確に伝達し、それを考え思うのは読者の良識であるという図式が健全な報道ではないでしょうか。

       「人は石垣 人は城」
      虚心坦懐 450年前に戻って考えましょう。

2008年1月1日掲載




★ 略歴・役職 ★
 須 田 健 夫(すだたけお)

☆東京慈恵会医科大学大学院卒
 学校法人 慈恵大学評議員
 東京慈恵会医科大学同窓会副会長
☆日本消化器がん検診学会 評議員・指導医・認定医
 日本消化器がん検診学会 大腸がん検診精度管理委員会委員
 日本外科学会認定医
 埼玉県外科医会理事
 大宮医師会大腸癌検診委員会委員長
 大宮医師会胃癌検診委員会委員
 大宮医師会大宮消化器病医会会長
☆日本医師会認定産業医
 独立行政法人 埼玉産業保健推進センター相談員(産業医学)
 厚生労働省委託事業 大宮地域産業保健センター副センター長
 大宮医師会産業医会副会長
◇(前)埼玉県警察嘱託医